月だけが見ていた
「大丈夫です。ちょっと歩きにくいけど」

「そうか」



深夜の歩道橋に、私たち以外人影は無かった。

カツン、カツン、と
私が履いているパンプスのヒールの音だけが辺りに響いている。


……そう

この人は、いつだって私を見ていてくれるのに


私は



「葉子」



階段を上りきる前に、主任は足を止めた。

私も顔を上げる。
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