月だけが見ていた
「年頃になったら嫌われないかなぁ、俺」

「生まれる前から何を心配してるんですか」

隣で笑う私の手は、しっかりと修治さんに繋がれていた。

結婚して数年経つのに、今更手を繋ぐなんて何だか気恥ずかしいけれど
彼はまるで気にしていないようだったので断るのを止めた。


「楽しみだなぁ、俺たちの子ども。来年の今頃には三人家族なんだもんな。」

「うん」


ふと、何気なく空を見上げると
雲一つない空に、白い三日月がうっすらと浮かんでいた。



「……」



いつだったか、こんな風に誰かと一緒に真昼の月を見上げた気がする。


でも、その時隣にいたのが誰だったのか

もう自信がなかった。
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