泣き虫イミテーション
相澤家はひどく賑やかだ。しばらく質問攻めにあった後、兄弟というテーマの調べ学習をしていると朔良の母親に言い、朔良の弟たちと家の近くの公園に行く。
小さな児童公園に楽しそうな声が響いた。

「ごめん、うちの母親が」

「そう?楽しくて素敵なお母さんだったと思うけど。」

「うるさいだけだよ」

「さくらー、早くこいよー」

「ちょっと、行ってくる」

「うん」


私の知らない家族の形。
まるで対極にいるような気分だ。私は姉さんのことを名前で呼び捨てにしたことも、あだ名で呼ばれたこともない。
でもきっと相澤家は普通の当たり前の家族の形なんだとわかる。


「おねーちゃんもいっしょにやろうよ」

ボールをもった樹が笑いながら言ってくる。二衣はそれに頷くとベンチから立ち上がった。


ちびっこたちが疲れて帰りたいと言い出したのは、もう日もくれようかと言った頃だった。さすがに二衣たちも疲れて、朔良の家に帰りつくとすぐ玄関に座り込んだ。

「これが普段は部活帰りに毎日だよ」

「お兄さんって大変だね」

二人で楽しく談笑かと思いきやドアがあいた。

「ただい…、お兄ちゃん誰それ」

「妹の桃花だ。今年中2」

「はじめまして、朔良くんと同級生の橘二衣です。今日は夜ご飯までよろしくさせてね」
「お兄ちゃん、彼女なの?」

「桃花、先に挨拶して」

「お兄ちゃんが答えたら」

「彼女じゃないよ」

「はじめまして、桃花です」

桃花は無愛想なまま、朔良にしがみついていう。相当、兄を好いているようで微笑ましい。


「家まで送るよ、もうすごい疲れてんだろ。ちび二人の相手ずっとしてたから」

「うん、すごいつかれた。子供って本当に元気だね」
普段とは全く違う休日。
こんな日々は楽しいだろうなと夢みてしまいそうなそんな日常偏差。

「…あー、羨ましい」

少し後ろを歩く朔良に聞き取りにくい声で小さくこぼす。
それは姉妹でありながら完璧と完璧を目指す偽物に別れてしまった二衣と単衣の間、繋がらなかった絆を嘆く言葉。
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