泣き虫イミテーション
駅までの道。朔良は二衣の隣を静かに歩く。二衣もそれに合わせるように黙っていたが、道のりの半分を過ぎたくらいで、口を開いた。

「桃花ちゃんは兄思いだね。可愛くてしょうがないでしょう」

「いや、あれはおっかないだろ。それに妹だから可愛いとか思えないし」

「そうかな」

「世間一般は分からないけど、少なくともうちはそう。」

二衣は街灯のしたで朔良の方へ振り返る。一歩分、間をあけて朔良も止まった。

「なに」

「一つ、朔良くんに耳寄りな話。」

「なに」

「別にミツは私の彼氏ではないからね。だから君と私が付き合えないこともないよ」

「俺は世界一あんたを可愛いとは思えないから遠慮する」

言葉とは裏腹に心臓は早鐘をうつ。

「桃花ちゃんが怒るものね」

「世界一可愛い妹だから大事にしてやらないといけないだろ」

「嘘つき」

「嘘じゃない。たった一人しかいないんだから世界一だよ。」

「そう、そうだね。じゃあ、ならもうフェミニストは終わりでいいよ。駅まで送らなくても平気。」

「それはちょっと承諾しかねるけど」

「だってほら男女間に友情は成立しないの。考えてみてよ。どうして一緒にいるのかわからなくなるでしょ。だがら、もう私に近づかなくていいよ。」

はっきりとした線引き。ここから先は蟷螂の毒。魂を奪う恋の時間。
踏み込めないなら近づいてほしくない。
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