はちみつレモン

 ふと目線を上げると、自席から一部始終のやりとりを見ていたらしい課長と目が合った。
 微かに唇の端を上げる、私の好きな笑い方。ヤバイ、顔が熱くなる。



 誰にもやるなよ?



 声を出さずに、唇がそう動いた。


 彼の声が好きで、それが聞けるなら怒鳴り声でも説教でも構わなかった。だから独り占めしたかった。
 けれど今は声なんて出してない。なのに何ですかその破壊力。
 課長からそんな独占欲仄めかした事言われるのなんて初めてで。赤くなるなって言う方が無理でしょう、これは。
 田中君とのやりとりに色気は欠片も混じってないし、たかがのど飴を譲る譲らないの話だ。もちろん課長はそれを分かっているからあんなに楽しそうなんだろうけれど。


「ちょっと陽菜顔赤いよ。熱ぶり返したんじゃないの?」


「えっ?違う違う、もう全然大丈夫!」


 私の顔色を勘違いして心配そうにのぞきこむ美樹に慌てて手を振った。
 放っておけば課長を見つめっぱなしになってしまいそうだったので、ある意味助かったとも言える。


 今日の待ち合わせは午後7時30分。
 二人きりになって開口一番、私は何と言えば良いだろう。
 そして課長は────何て最初に言ってくれるだろう?


 あなたの全ては私のもの。
 そして私の全てはあなたのもの。








fin.
< 8 / 8 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:51

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

interaction

総文字数/0

恋愛(オフィスラブ)0ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
触れていいのは一人だけ。 coming soon オススメ掲載記念 「独占欲」→「はちみつレモン」→「interaction」
ドメスティック・ラブ

総文字数/106,703

恋愛(その他)160ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
好きかと問われれば 好きだと言える 大切かと尋ねられたら 大切だと胸を張る 永遠を誓ってはみたけれど でもこれはまだ 恋にも愛にも足りてない、かも H29.3.1~H31.2.23
それが愛ならかまわない

総文字数/133,912

恋愛(オフィスラブ)290ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
私が隠す弱みにあなたが見せた素顔 見せない本心の裏で共有する秘密 その甘さに、いつの間にか溺れてる ※「キスよりも熱いもの」の 篠塚莉子と椎名晃の話です …が、微妙に設定が違います もちろん未読でも全く問題はありません H27.1.12~H29.1.31

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop