【好きだから別れて】
真也とは相変わらず会話も少なく、ねぎらいの言葉のかけあいもしない。


真也があたしといる意味を自分なりに解いても、真っ当な答えも出ない。


一向に重ならない二つの影の元に産み落とされた光がいてくれたから、二人は切れかかった糸でかろうじて繋がっている。


互いに必要のない人間。


戸籍上だけの愛情劇な二人…


1ヶ月。


2ヶ月。


3ヶ月…


産後回復しきらない体をひっさげこなす毎日の中。


息が詰まる男を尻目に光はグングン成長し、全体的に肉付きもよくなった。


モチモチ赤ちゃん肌の光を連れ街を歩けば、100%の確率で女の子に勘違いされ「可愛い」「抱っこさせて」と声をかけられる。


光に見いだされる日常のほんの些細な出来事。


それだけがあたしの幸せで、他に希望なんてどこにもなかった。


借金でスタートしたあたし達家族は出産後アパートを借り、狭いながらも身を寄せあい生活しだしていた。


家賃は格安で場所も悪くなく、スーパーや駅、病院が近くにある。


車だって元々あたしが乗ってた軽がある。


普通の身なりに普通のごく一般家庭の生活水準。


だったはずなのに狂ってしまったんだ…
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