【好きだから別れて】
「真也。ごめんね」


謝罪の言葉を口にし、申し訳なさげに真也の背に向かい謝ると、真也は振り返らず数秒の間の後


「俺が悪かったごめん」


と逆に謝罪の言葉を投げ掛けてきた。


正直どっちが謝ろうがどうでもいいんだ。


偽物だろうが仲を取り繕って機嫌とりをすれば和解できる。


家族を演じていける。


あたしは家族を継続したい。


ここに愛が無かろうが自分が生きる為、光を生かす為に家族を壊すもんか。


「ううん。歩が悪いんだ。勝手に飛び出してごめん」


「俺…お前達失うのは嫌だ。裁判所行って債務整理するから…だから…」


「…」


「書類だのなんだのわかんねぇし、方法知らねぇから歩に着いてきて欲しいんだ…」


「うん」


「…」


「わかった。真也、決断してくれてありがとう」


「俺はただ…歩と離婚したくないんだ」


「わかったってば。必ずラクになる。一緒に頑張ろう」


謝れば謝り返して来た真也はまだ人として救いようがある。


嫌いでも、いらなくても。


歯がゆくとも、届かなろうとも。


あたしが自ら出した答え。


それは家庭を守る事だった。
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