【好きだから別れて】
それから数日後。


あたしは何年も解約せず気に入って使ってきた携帯を解約した。


いや。


どこかで悠希がいつかかけてくれるんじゃないか期待し、番号を変えれなかったんだ。


いつか迎えに来て。


あたしを一人にしないでと…


悠希と歩。


二人はお互いが知らぬ相手と幸せを確立し、違う人生を各自で歩いて行く。


悠希が乗った船にあたしは乗らず、時と共に地平線の彼方。


遠く遠くへ見えなくなるのだろう。


あたしは取り残されたいつ沈んでもおかしくない古船に乗り、真也の舵で反対へと進む。


荒波に飲まれ、もし船が沈んでもしまったらそれも「歩」の人生だ。


だが、あきらめた訳ではない。


「歩」の人生は「歩」が決める。


幕はあがったんだ。


これが歩の本ケジメ。


何年もお世話になった携帯番号は歩が所有者から外れ、いつかは他人の物となる。


二度と


悠希から電話がかかってくる事も、あたしからかける事もない。


そうするしかなかった。


そうせざるをえなかった。


自分で繋がりをたつ方法でしか自分を慰められなかったんだ
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