【好きだから別れて】
あたしは未だにどうしてもできない事がある。


真也の前で泣くのをためらうってしまうんだ。


真也に弱さを見せれない。


見せれる訳がない。


そんな意地っ張りなあたしが光を昼寝させようとした時。


堪えきれぬ思いが溢れ、一度だけ涙を流した。


「ねぇママ。どうして泣くの?」


顔を覗き込む光に涙は見せまいと顔をそむけるのが精一杯で。


懸命に笑顔を作った。


「どうしてかねぇ」


「ママかわいそうね」





ママかわいそうじゃないんだよ。


全然かわいそうなんかじゃない。


ママがいけないの。


「泣かないよママは!強いんだから!」


「泣くのはメでしょ!」


「そうだね。泣くのは弱い子だもんね」


「ねぇママ。光ママとずっといたいの」


まだ4歳にもならない我が子は教えてもいない言葉を口にし、袖で涙を拭ってくれた。


「光…ずっと一緒ね」


「ママとずっと一緒」


あたしの天使はいつの間にかナイトになってくれてた。


本当に光の成長を嬉しく思う。


あたしはこの子を産んでよかった。


光と出逢えてよかった。


ママがあなたを選んだんだよ。


あなたがママを選んだんだよ。


光が選んだパパは好きですか?


ママは前よりパパが好きになったんだよ。


最近光と遊んでくれるもんね。


パパはね。


いつの間にか空気になってたみたいだよ。


光とママの空気みたいな存在なんだね。
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