雨に似ている
詩月は理久の言い分に、確かにそうだなと納得する。


「毎晩、遅くまでピアノ弾いてんだろう? 闇雲に弾いたって何も見えて来ないだろ!焦ってどうこうなるものでもないんだし」

詩月は理久のことを家が隣同士の幼なじみでよく知っているつもりだ。

が、時々思いもよらず真面目なことをサラリと口にしハッとさせられるし、成る程と納得させられ感心することもある。

物事を見ていないようで実は本質まで見抜いているようにも思える。


「実はな、駅前通りの下村楽器店が店の宣伝を兼ねて実演を企画していてな。ピアノ奏者とバイオリン奏者を探しているんだが……どうだ?」

「僕?」

「ああ。けっこうスゲェ楽器を展示するらしいぜ」

理久が詩月の興味を引こうとする。
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