雨に似ている
「明日、17時に楽器店に来てくれって。ピアノとヴァイオリンで1曲ずつ聴きたいとさ」

「わかった」

「貢と郁子には俺から連絡を入れておく」



翌日。

詩月は理久に伝えられた通り、駅前通りの下村楽器店へ行き、実力チェックにピアノとヴァイオリンを弾いた。

楽器店のオーナーとは、ピアノとヴァイオリンのメンテナンス等で普段からお世話になっているが、実際にまともな演奏を聴かせたのは初めてだった。


オーナーは、詩月の演奏を文句なしに認め、貢と郁子も問題なく実力チェックに合格し、ライブ当日の打ち合わせを行った。


「当日のピアノは、スタンウェイのグランドピアノを弾いてもらう」

オーナーは言い、当日に展示する楽器の数々を披露した。

なかでも詩月が理久から聞いていた、ルイ14世時代の豪華な装飾を施したピアノは、美しく気品溢れ存在感をアピールしているように思えた。

3人はピアノにみとれ溜め息が自然と漏れ、暫く声も出せないほどだった。
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