雨に似ている
「君の耳は節穴か?……周桜宗月似の演奏……「ショパンのエチュード」どこが完璧なんだ!? 周桜宗月は2人いらない」

詩月は、いつになく激しい口調で言い胸に手を押しあてる。

ゆっくりと深く数回、息をつき、制服のポケットを探る詩月に郁子が聞き返す。


「周桜宗月似のショパン?」


「気づかなかったのか……鈍感な耳をしているんだな」

郁子は首を傾げ、間を開けずに訊ねる。


「周桜くん。あなたが……ショパンを弾きたくない理由、お父さん「周桜宗月」と弾き方が似ているから?」


「……似ているからなら、まだマシだ。似てしまうから……なんて簡単なレベルでもない。……弾いているうちにわからなくなるんだ、自分がどう弾いているのか、どう弾いていいのか」

「モルダウで演奏放棄をしたのも、わたしの演奏中に倒れたのも?」


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