take it easy
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「古瀬さんて、優しいですよね~」

「今の話で、いったいドコが優しいのか、私は理解に苦しむわよ」

 課の先輩方と一緒に社食ランチ。

 ニコニコとB定食を頬張ると、先輩たちは呆れた顔をしていた。

「深雪ちゃん。悪い事は言わないから古瀬だけはやめておきなよ」

「確かに、うちらの同期うちでも出世頭かも知れないけど、同じ様なので優しい男なんてたくさんいるんだから」

「優しい人はたくさんいますけど、古瀬さんは一人じゃないですか」

 先輩たちは古瀬さんを鬼か悪魔みたいに言うけれど、私はそうは思わない。

 確かに睨まれると怖いし、やらかしてしまったミスは、重箱の隅を突く様に許してはくれないけれど……

「だって先輩。ミスしても〝あ~いいよ。こっちで直しておくから〟なんて言われると楽ですけれど、それって優しさじゃないですよね?」

 そう言うと、先輩たちは顔を見合わせる。

「Mね」

「間違いなくMね」

「え。古瀬さんて、女性を縛る癖でもあるんですか?」

「…縛って欲しいの?」

「嫌です」

「それはよかったわ」

 先輩たちはホッとして、それから真面目な顔をした。

「どちらにせよ深雪ちゃん」

「はい」

「古瀬は〝将来の為にならないから〟なんて理由で、女をフルような男なのよ?」

「将来の為?」

「……さぁね。当時の噂では、社長か専務の娘を狙ってるって話だったけど」

「ああ。つまり玉の輿を狙っているんですか」

「そうじゃないかって噂よ、噂。先月、部長の持って来たお見合いは断ったみたいだけど」

「お見合い……」

「まぁ。わたしらは30近いからね~」

「そうそう。21歳の深雪ちゃんとは違うのよ~」

「じゃ、先輩たちもお見合いしてるんですか?」

 言った瞬間、頬っぺたをブニっと掴まれた。

「どの口が言ったの?」

「じょうらんれふ! じょうらん~」

 先輩たちの方が酷いです~。

 思いながらも、頬っぺたを返してもらった。
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