私の優しい人
「いいお店ですね」

「本当にそうだよね。歓送迎会が多い職場だから、この辺りの店だけはよく知ってるんだ」

 地ビールを美味しそうに飲む横顔のラインは綺麗だった。
 彼にすっぴん勝負を挑んだら私は完全に敗北するだろう。

「考えてみたら、男の人はいつでも素顔なんですよね」

「まあそうだね。でも男の顔は重要じゃないから。里奈ちゃんは自然でいいよね」

「そう見えますかね……」
 最後は言葉を濁すしかなかった。

 実はナチュラルに見えるけれど、化粧はしっかりしている。
 化粧映えする顔と言われた事があるけど、裏を返せば普段は冴えないという事だ。

 この人の前で素顔を晒す日が来るのか分からないけど、その日が怖いと思った。

 誰? とまでは言われないだろうけど……それに近いものはあるのかも。

 啓太さんはいつまでも、照れる私の顔を柔らかく見ている。

 心臓の音がバクバク言い始めたのは、お酒に弱いせいじゃない。

 視線の意味を勘違いしてしまいそうで、私は一度目を逸らした。

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