極上ドクターの甘い求愛



"…お疲れ様でした!"


和解は出来ないかもしれないと思っていた小島さんと、関係を修復できそうな予感を感じて安堵した私は、更衣室を飛び出した。


"一緒に帰ろう。終わったら、駐車場に来て。"


先生と交わした約束が、脳内で何回もリピートされる。

業務が慌ただしい先生のことだから、まだ駐車場にはいないかもしれない。駐車場に要る可能性の方が低い。

でも、薬剤部の前を通って廊下を走る私は、駐車場で先生が私を待ってくれている予感がした。


「は……っ」


数時間前に別れたばかりなのに、先生に早く会いたくて仕方がない。

先生の顔が見たくて、先生に"繭ちゃん"と呼んでほしくて、形振り構わず駐車場へと駆けて行く。


「先生……ッ!」

『!』


病院の職員用玄関を出て、駐車場へと一目散に走った私の目に映ったのは、ベンツの横に立って私を待っているスーツ姿の岩崎先生。

迷うことなく先生に駆け寄った私に、先生は"お疲れ様"と物腰柔らかな口調で言ってくれた。


『帰ろっか。』

「……はい!」

『その前に、ご飯一緒にどう?』


岩崎先生に対するこの甘酸っぱくて切ない気持ちは、恋がもたらしたモノだと認めよう。

先生のことが好きだから、こんなにも幸せなんだと。


「――もちろん。」


この時、初めて私は先生の誘いに自発的に了承した。

これから私は、どんな初めてを先生と一緒に体験していくんだろう。

ベンツの助手席に乗り込みながら、恋愛初心者の私に待ち受けているこれからを思って、心を弾ませるのだった。



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