極上ドクターの甘い求愛



医局室の窓からチラリと岩崎先生を除き始めて10分は経つけれど、未だナースさん達が先生から離れる様子はない。

医局室に来てからというもの、先生の周りには熱い熱いハートが飛んでいるまま。


これじゃあ、お礼が渡せないじゃんか…。と思うけれど、私一人であの大群の中を突っ切ることなんてできない。

ただでさえ、日々の岩崎先生のストーキングにも似た行為が病院内で知れ渡っていて、皆から睨まれているというのに。


『――君、こんなところで何してるの?』

「へっ?」


どうしよう、と途方に暮れていると後ろからかかった声にビックリして即座に振り向いた。

そこには岩崎先生と同期だという室井先生がいた。岩崎先生絡みの頼まれ事しか回ってこないと、随分前に薬剤部の先輩方に噂されていたことを思い出す。


『…岩崎に用かな?』

「いっ、いえ…っ!すみません、失礼しますッ」

『あっ、ちょっと!――あーぁ、行っちゃった。』


図星を突かれて反射的に嘘を言ってしまった私は、逃げるように医局室から立ち去った。

あーもう、何やってんだろ、私…。室井先生に渡せばよかったのに。……あ、でも、それじゃ室井先生をパシリに使ってるみたいで失礼だよね?

薬剤部に戻って、先に出勤していた先輩たちに挨拶を交わしながら、渡せなかったお礼が入った紙袋の行方をどうするのか頭を悩ませる。

生ものだしな…。とりあえず冷蔵庫に入れておこう。

予想していなかった緊急事態に戸惑いつつも、その紙袋を職員用の冷蔵庫の中に入れるのだった。



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