労苦
第12章
     12
 大村係長が帳場の管理官席に座り、部下たちに指示して、意見を出させる。


 南新宿での三原伸吾殺害の件に関し、捜査会議が開かれた。


 だが、会議自体、何となく鈍い。


 確かにそうだろう。


 所轄の捜査員がいくら結束して動いても、殺人事件の捜査など進むはずもないのだ。


 お気の毒に。


 そう思いながら、ずっと会議場の一番後ろの席に座って、議場内の様子を窺う。


 ICレコーダーを回しながら……。


 所詮こんなもんだ。


 所轄だけで、殺しを解決するのは到底無理である。


 それにしても一課長の吉村は、なぜ南新宿署に捜査案件を丸投げしたのだろう?


 今となっても真相は分からない。



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