労苦
 そして咳払いし、


「吉村一課長、私は警視庁付の監察官として、他の部署の捜査員を捜査に手配することも出来ますよ。一言言えばね」


 と言ってから、再び取り巻きの刑事を連れ、フロア出入り口へ向かった。


 居合わせていた俺も橋村も、しばらくぼんやりする。


 何が何だか、よく分からなかったからだ。


 監察官が一課の捜査を止めるという。


 監察官は職員の規律を正すため、職務内容などを調べるのが主な任務だ。


 それが刑事部に乗り込んできて、捜査中の案件に関し、口を出すとは……。


 まあ、別に気に掛けてもしょうがなかった。


 所詮監察官はどこの省庁にもいる上級役人に過ぎない。


 警察を舐めるな。


 そう言いたかった。
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