労苦
てる」


「……」


 だんまりを決め込み、歩き出す。


 所轄が手をこまねいてなくても、警視庁の人間が事件捜査に協力するのは当然だろう。


 そう思っていた。


 あの物騒な街で起きた殺人事件を看過するわけにいかない。


 歩きながら、そんなことを感じていた。


 地下駐車場に停めてある覆面パトカーに揃って乗り込み、運転席の俺も助手席の橋村もシートベルトをする。


 エンジンを掛け、アクセルを踏み込むと、車が走り始めた。


 都内の道路を。


 慌ただしいのだが、俺たちも放っておけないのだ。


 亡くなった三原の惨殺死体が脳裏をよぎるごとに思う。
< 16 / 666 >

この作品をシェア

pagetop