労苦
 徹底していた。


 単独で動くと、まずいのである。


 有事の際、一人だと危ないのだし、常に二人で動く。


「梶間さん」


「何?」


「大村係長が亡くなってから、捜査が進みませんね」


「ああ。現場の所轄の事実上のトップがいなくなったんだからな。痛手だよ」


「でも、あの場面は忘れられませんよ。ちょうど大村係長が血を吐いて倒れてて、コーヒーからは濃いアーモンド臭が漂ってましたから」


「君もまだ現場の刑事として場数を踏んでないからね」


 そう言うと、橋村が、


「梶間さんは年齢相応にいろいろと見てこられてますからね」


 と返し、唇をキュッと結ぶ。
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