労苦
 言って、溜まっていた息を吐き出すと、石川も後から入室してきて、


「そう悔まれることはないと思いますよ。我々は着実にホシに近付いてるはずですから」


 と言った。


「近付く……とは?」


「そのままの意味です。事件はいずれ解決します。……暗礁に乗り上げることなどありませんよ」


 石川は冷静だった。


 おそらくどこかしらで確信があるのだろう。


 俺も橋村も、同僚の前田さえもが気付かないところで。


 前田の淹れたコーヒーがやけに苦かった。


 いつもよりも香りが濃くて。


 多量のカフェインが意識を呼び覚ます。


 覚醒した後、話を続けた。



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