王子の結婚

ユナの手首を掴んで引き寄せた
ストンと胸の中に収まる

驚いて、戸惑って、ドキドキと胸が鳴る
その音はカイにも伝わりそうなほどに…

どうしていいか分からず固まったままで、何もかも思考が停止していた


だから聞こえていただろう、足音さえ耳に入ってこなかった
気付いたのは彼の声が聞こえた時


「何をしてるんですか、兄上
ユナは僕の婚約者です、事と次第に寄ってはいくら兄上でも見過ごせませんが?」

いつもユナに向けられる柔らかい声じゃない
低く威圧的なその声に、カイの胸に収められていたユナがビクッとした

抱き寄せていた手が緩められ、解放される

「そんな怖い顔しないでおくれ
ふらついてた彼女を抱き留めただけだよ
ここに来て緊張も多いだろう、疲れてるみたいだ
休ませてあげて」

そう言ってユナの肩を押して引き渡すカイに、ソウは微笑み言葉を返す

「誤解してしまったようです
兄上はイル兄上とは違って、無闇に手を出すような方ではなかったですね
彼女を気遣っていただいてありがとうございます」

どこか挑戦的な笑みを浮かべて
ユナの腰に手を回す

カイは微笑みを返すだけで去っていった



残された二人に訪れる沈黙

さっきのカイの言動にまだ動揺したまま

そして彼の表情は明らかにいつもと違う

青ざめて言葉も発せないままのユナに勢いよく唇を押し当てた

吃驚して目を見開く
唇が離れるとすぐ、ソウが口を開いた

「何があったの?ユナ
兄上が言ったのが嘘なことは分かってる
でも、ユナを怒ってるわけじゃない
ユナの頭が兄上でいっぱいになってるのが嫌なんだ
お願いだから、僕だけを見て」

懇願するようにユナを見つめる

その言葉にいろんな気持ちが駆け巡った


彼を知る前から会っていたという事実
私の事情を知って、抱き締めてくれたその腕に救われていた幼い時の自分

カイ王子の存在は、ほぼ記憶にない
言われてみればいたかも、そんな程度で

でもその容姿をソウ王子として偶像化するほど、印象深かったのだろうか


婚約を取り消せるはずもないのに何故あんなことを言ったのか…

“愛してる”と言ったカイ王子

“大事にしたい”とは言ってくれても、その言葉はくれないソウ王子



私だって彼だけを見たいのに…


揺れる


心が、揺れる…









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