姉弟ものがたり

同じ大学を受験していたはずだった…受験勉強も一緒にしたし、合格発表も一緒に見に行った。
これからまた四年間、同じ校舎で学び楽しい時間を共有できると思っていたのに…。


『大学、一緒に受けたよね?…合格、してたんだよね?』


放心状態に陥っていた精神を何とか立て直して、半ば縋るように声を震わせる。
嬉しそうに輝いていた彼女の瞳が、一瞬戸惑ったような色を浮かべて、徐々に悲しげに歪んでいく。


『…喜んで、くれないの?』


今にして思えば、そう言った時の彼女の声も心なしか震えていた。
そんな些細なことにも気づけない程、あの時の自分は動揺していたのだ。
「冗談だよ」という一言が聞きたくて何度も問いかけているうちに、いつの間にか責めるような口調に変わっていて…ハッとして正気に戻った時には既に遅く、悲しげな笑顔を浮かべた彼女が静かにこちらを見つめていた。


『…ごめんね佐久間』


それが彼女と交わした最後の言葉だった…。
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