東堂くんは喋らない。
聞き慣れた声に、ガバッと勢いよく顔をあげると
いつ入ってきたのか、ジャージ姿の東堂くんがすぐ近くに立っていた。
「と、東堂くん!?じ、授業は…」
「…体育館シューズ、忘れて」
机の横のフックにかけてある、シューズ袋を取る東堂くん。
「…つか何やってんの、松原は」
「…あ、えと、ちょっと頭痛くて…今日の体育は休もうかと」
「……ふーん、そ」
「……うん」
2人しかいない教室なのに、私の心臓の音でやけにうるさい。
…き、緊張しすぎだよ私。
ふつーに、ふつーに…
「…あのさ、」
「ひゃいっ」
「……」
…普通って難しい。