東堂くんは喋らない。
「…というわけで、私たち、付き合うことになりました!」
そして次の日。
私はさっそく、柑奈と山本に東堂くんと恋人同士になったことを発表した。
照れくさい気持ちはあったけど、柑奈にはすごく話聞いてもらったし、山本にも、何だかんだ、背中押してもらったし。二人には報告したいなって思ったんだ。
東堂くんには「必要ない」「人に言うことじゃない」と断固拒否されたが、ここは私の意見を押し通させてもらった。
「そっか、おめでとう!」
笑顔で祝福してくれる柑奈と
「ふっ、ようやくかよ。まったく、手間のかかる奴らだ…」
と両手を広げ、外人風の大袈裟な仕草で肩を竦める山本。
「ま、よかったな!」
だけどすぐにニカッと笑って、ガシッと私と肩を組んできた。
「わっ」
「ほんと、いつになったらくっつのかとジレジレしたわ~!」
「ちょっ暑いから離れて」
「おいっ、なんだ?恋のキュービッド様にその態度は!」
恋のキュービッド様って…。
私は苦笑い。確かに山本のおかげで一歩踏み出せたわけだけど、きっちり偉そうにしてくるあたりが、さすが山本だ。
その時、グイッと、強制的に山本が引き剥がされた。
そして目の前に広がる、東堂くんの広い背中。
「…気安く触らないでくれる?…俺のだから」
…心臓がドキュン、と矢で射抜かれました。