東堂くんは喋らない。












「だから山本になんて言いたくなかったんだよ」


「まぁまぁ、いいじゃん!いずれバレることだしさ!」





帰り道。


家までの道のりを、二人並んで一緒に帰る。



それぞれの犬の散歩で公園で会うことはあっても、こうして一緒に帰ったことなんて一度もなかったから、なんだか、あぁ、付き合ってるんだなぁ、なんて思って、照れくさい。




「…そんで、あんたはずっと嬉しそうだよね」



ご機嫌で歩いていると、東堂くんがちょっと横目で私を見ていった。



「え?そりゃーそうだよ!
東堂くんと一緒に帰るの、はじめてだし」



「…それが、そんなに嬉しいの?」



「当たり前じゃん!」



「……ふーん」



東堂くんが興味なさそうにそっぽを向く。



だけどその耳がしっかり赤くなっていたのを、私は見逃さなかった。




「ふふっ」



「…何笑ってんの」



「東堂くん、可愛いなぁと思って」



「…バカにしてんの?」



「まさか!」





そんなやり取りをしているうちに、いつもの公園の前に着いた。



足を止めたのは、東堂くんの方。






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