東堂くんは喋らない。
「ちょっ何それ!ハチこう見えてけっこう賢いんだからね!」
おても待てもお座りもできるし!
…エサの前限定だけど!
「…反論するとこソコかよ」
「は?何が?」
「………べつに」
東堂くんは呆れたようなため息と共に立ち上がると、ココア、と呼んだ。
「帰るぞ」
「えー、もう?」
思わず声をあげると、ワンワン!とハチも応戦した(たぶん行くな!と言ってる)。
「もうちょっといなよ~!私、まだ東堂くんに聞きたいことが色々…」
「…………」
「あっちょっと!」
いつも通り私が喋っているのを完璧無視し、歩き始めた東堂くんを慌てて追いかける。
「あさって、クラス会!来てよね」
「………」
足を止め、ジロジロと隣に立つ私を眺めまわす東堂くん。
「…な、なに」
その視線に思わずたじろくと、ギロ、と鋭い彼の瞳とぶつかった。
「……変わってるよな」
「え?」
「……おまえ。
俺、基本他人は全員嫌いだけど、おまえは…嫌いっていうか…」
珍しく言葉を濁し、何か考え込むように瞳を伏せる東堂くん。
私のことは嫌いっていうか…なんなの?
「…嫌い、っていうか。
俺が今まで出会った人間史上、最高に鬱陶しい」
「………は?うっとう…ってちょっと!?」
今日もそう。
気付いた時にはもう彼の背中しか見えない。
…いつか
「…ねぇ!東堂くん!なんでもいいけど土曜日は空けといてよね!クラス会だから!」
私の声に、君が振り向いてくる日は…くるのかな。
………ないな。