東堂くんは喋らない。
「東堂くん…ま、待って!」
と言われて彼が待ったことはない。
「だーかーら待ってー!」
なので無理やり前に回り込み、進路を妨害した。
「…なに」
明らかに不機嫌そうな東堂くん。
「あ、あの…その…勝手に失恋決定とか言って、すみませんでした…」
ギュッ、と東堂くんの眉間に皺が寄る。
ヤバい!ますます怒ってる!?
「え、えっとそのー、私気になって!
昨日の…優月さん?と東堂くんが、なんだか気まずそうな雰囲気だったから…」
ただの知り合い、とか友達、って感じじゃなさそうだったし…。
「何か…あったの?あの子と…」
「…………」
視線を逸らした東堂くんが、窓の外を見る。
「………別に。
何もないけど」
邪魔、と肩がぶつかって、東堂くんは気怠そうに歩いていった。
…うそつき。
絶対、何かあるのに。
いっつも心の中は見せてくれない。