新選組へ ～ 連理之枝 ～

御所

【中川宮】

不憫だ…

産まれてすぐ、御所を出された

自分で身を守る為に、物心つくころには

御庭番に預けられた〝夏弥〟として

幼き頃に１度、見かけたことがあった


非常に聡明で、将軍の器であると

思ったものだ


武芸にも秀で、人格も申し分ない


次期将軍の座を巡る争いに、巻き込まれた



慶喜が、阿部を使って暗殺を企てた

阿部は、返り討ちにあった




これが原因で、慶喜は謹慎処分となった


家茂が将軍に決まってすぐ


家定が亡くなった



そして、家茂の将軍宣下が行われた


内密にであったが、親王宣下も行われた


本来、内親王宣下のはずであったが

産みの親である、桂宮も男であると

思っていた


本人も自分が男だと思っていたのだ


気づきようもない




只１人、慶喜は女ではないかと声を上げた



初潮が始まり、隠せなくなったと

育てた野村が家茂に話した


家茂は、徳川 春歩として、家定の実子の身分を回復させようとした

自分の補佐役をさせたかった

これに反対したのは、慶喜で

また、家茂と慶喜が対立を始めた


争いを見るうちに、どんどん心を閉ざして


女として、生きると言いだした


そうすれば、争いが終わると考えたのだ


女に戻ったら、今度は、家茂と慶喜の
どちらに嫁ぐかと争いが始まった


この醜い争いが、夏弥を苦しめた


1年にも渡り続いた… 慶喜に嫁ぐことが


濃厚になったある日


家茂が夏弥を襲わせた


偶然、慶喜が夏弥を助け、大事には至らなかった

しかし、今までの心労と精神的な苦痛と

激しい恐怖に、記憶を失った


それからというもの、血を見る度に

記憶が無くなるようになったのだ


育ての御庭番は、夏弥に春歩として

家茂に使えるように、嘘の記憶を植えつけた


これが、更なる苦しみを生んだ