雨恋~雨のちキミ~
「これぐらいの雨やったら、走って帰ったら何とかなるし」


『ん』と言って傘を差し出すので、ふと顔を横に向けると

もうあたしの家の前だ


「また明日」


「ちょ…里やん!さっきの『我が恋に』とかっての、何なん?!」


くるりと背を向け走り出した里やんの背中に問いかけたものの、彼は振り返ることもなくそのまま雨の中に姿を消した


「………はぁ」


静かになった家の前で佇んでいると、サーッという雨の音が大きくなる

どれぐらいボーッとしていたのか

車輪が水を巻き込む音で、すぐ傍を自転車が通り過ぎたことに気付いた

そしてそれが停まった音がして顔を上げると、傘を傾けこちらを見る水月先輩と視線がぶつかった


「水…月、先………輩…?」


自転車に跨ったまま、バックであたしの方へと戻ってくる先輩


「大丈夫?」


目の前に先輩が居る


あの優しげな眼差しが憂いを帯びていて

その悲しげな表情に、ギュッと胸が締め付けられた


「大丈夫?」


もう一度同じ質問をされ、ハッと我に返る


「大丈夫、で…す」


「そっか。道端に立ち尽くしてるから何かあったのかと思って見てみたら、同じ学校の制服やったし。心配になって声掛けてん」


口元を綻ばせ、目尻を下げる先輩
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