2・5次元の彼女
そして、久しぶりにゲームの世界へやってきた景斗を待ち構えていたのは、イリーナのクレームだった。
『景斗、ひどいよねー。人が助けを求めてるのにガン無視なんて』

思い返してみると、イリーナからの『助けて』というメールに返事を出さぬまま、すっかり忘れていた。
『ご、ごめん』
景斗は平謝りする。

『俺、景斗がピンチのとき傍にいてあげたのに。俺がピンチのときは見捨てるんだもんなー』
すっかり拗ねてしまったイリーナに、景斗は仕方なくご機嫌を取る。

『ごめんって、見捨ててなんてないよ』
『本当?』
『ほんとほんと』
『じゃあ、英語のレポート、手伝ってくれる?』
『……は?』

景斗はキーボードの前でため息をついた。
『助けて』とはそういう意味だったのか。

『どうすればいいの?』
『長ったらしい文章を英訳しなきゃいけないんだけど』
『英訳サイト使えば?』
『前にやったらバレて、課題が2倍に増えた』

景斗はパソコンの前で頬杖をついた。
手伝ってやりたいのはやまやまだが、学生を卒業して6年も経つ。単語も文法もすっかり忘れているだろう。
今さら何を手伝えるというのか。こんな老いた頭より現役のイリーナの方がよっぽどマシなのではないだろうか。

キーボードを打ちながら、ふとあることを思い出して、手を止めた。

……そういえば、ユウさんの会社、外資系だったよな。
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