2・5次元の彼女
景斗はずるずると力ない身体を引きずってリビングに戻ると、テーブルの上に残っていたグラスを掴んでぐっと喉の奥に流し込んだ。


携帯電話が再び震えた。
綾からだ。明日のデートプランについて書いてある。
正直そんなことを考える気分じゃなかったが、楽しみにしている彼女をないがしろにする訳にもいかなかった。


もしも――と景斗は思いを巡らす。

もしも僕が彼女なんて作らなかったら、ユウさんの傍にいれたのかな……?
そしたら、HARUさんのことは諦めて、僕のことを見てくれただろうか。

そんな都合良くいくはずがない、と景斗は自嘲の笑みを溢した。
ユウがHARUのことを諦められるかどうかは別問題だし、そもそも自分が恋愛対象として見られていないことは良く分かっていた。

綾のいたずらっぽい笑顔が脳裏をよぎる。

――僕が幸せにできるのは、僕に相応しいのは
僕を選んでくれた彼女だ。

裏切ることなんてできるわけがない。
後悔なんて許されない。

誰もかれもが笑顔でいられたらなんて贅沢なことを考えて、そんなに世の中が甘くないなんてことは十分に分かっているはずなのに

答えが出るはずのないことをひとりで悶々と悩み続けていた。
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