2・5次元の彼女
今まで聞いたこともないHARUらしからぬ弱音に、胸をギュッと掴まれたように息が止まる。

HARUが私にそっと手を伸ばす。
遠慮がちに、私の左手の指をそっと撫でるように取った。


どうして、抱きしめない?
さっきまであんなに強引だったのに。
いつものように、無理やり抱きしめてくれたなら、いい加減にしなさいって、振り払ってやれるのに。

急にしおらしくなるなんて、ずるいじゃないか。
これじゃあ、突き放すこともできない。


「ねえ、何でなの。どうして私が必要だなんて言うの。
家族がいて、あんなに幸せそうなのに、寂しくなんてないはずでしょ」

HARUは私の問いかけに、ふっと笑って目を伏せる。
彼の手から私の指がほろりと零れ落ちて、私の手のひらは薄っすら冷たい空を切って元あった場所へと戻っていく。

「……家族がいるから寂しくないとかそんなんじゃなくて」

HARUが力ない微笑みと共に顔を上げる。

「夕莉がいるから寂しいんだ」

私の名前と共に真っ直ぐな瞳で見つめられたら、もう何も言えなくなってしまった。

何それ。
私が悪いみたいに言わないでよ。

どうしようもなく愛おしくなってしまって
今までの『恋』なんてレベルじゃなくて
守ってあげたいとか、支えてあげたいとか、そういうたちの悪い感情のもので

歯止めが利かなくなってしまった私は彼に向かって手を伸ばす。
その仕草に呼応するように、彼はその大きな身体を小さくして私の胸に顔を埋めた。
その頭を、髪を、私はそっと撫でる。
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