幸せそうな顔をみせて【完】
 副島新が好きだと思ったのは『負けず嫌いの私』。飾ってない素の私だった。顔が好きとか優しい性格が好きとか普通の男の人が思うのとは違うのがのが副島新らしい。まさか『泣いている姿』だとは…。


「さあ、俺は話したから、葵の話を聞こうかな。俺だけ言わせて自分は言わないとかないよな」


 ヤラれた。


 副島新が私の言葉に素直に色々話してくれるから、凄いとは思っていたけど、それも恋人になったから素直に教えてくれると思っていた。でも、それは甘かった。どうにか誤魔化そうと思い言葉を探すけど、所詮はヒヨコの私。何も言えずにただ、黙るしかなかった。


『俺のことを好きなのに、いつまで経っても何も言ってこないから…』


 いつからか分からないのに、答えなんかない。だから、素直に自分の気持ちをいうことにした。副島新にとっては物足りないかもしれないけど、私にとってはこれが最良の答えであるの間違いない。


「いつの間にか好きになってた」


「それだけ?」


「うん。同期で仕事が出来る新のことを凄いと思っていた。仕事には厳しいのにそんな中で見せてくれる優しさとかがいいなって思って、いつの間にか好きになってた。これじゃ答えにならない?」


 好きになる瞬間は分からないけど、一杯のいいところがあって、それがいつの間にか好きという恋愛感情になっていたというのが正しい。


「いや。それでいい」


 そういうと副島新は私の身体をキュッと抱き寄せたのだった。
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