幸せそうな顔をみせて【完】
「私も似たようなことを言われた。正直、今日で新しい契約が取れるのではないかとさえ思っていたのに、無理だった。でも、その相手の方がとってもいい人で色々と話してくれて、自分の思っていたのと、実際に買う側からの視線で商品を見た時に足りない箇所が少しだけ糸口が見つかった気がする」


「なんて言ってた?」


 私は昨日、緑川さんに言われたことを順を追ってゆっくりと説明していく。すると、副島新は何か考えこむような表情を浮かべていた。私と違って、彼の頭の中のコンピューターはフルで解析に走っているのだろう。しばらく考えこんだ後に私を見つめ、ニッコリと笑う。


 私にはまだ解析の糸口を掴んだくらいなのに、すでに解析を終わらせただろう副島新の自信漲るその表情ドキッとする。頭が元々いいのも分かっている。それに伴うだけの行動力にも溢れているのもわかっている。


 でも…。


「葵、これで俺の問題も葵の問題も一気に解決できるかもしれない」


「本当?」


 羨望の思いに包まれる。


 私も自分の仕事をしながら、副島新の仕事もしていた。でも、ある程度の指針を作ることは出来たけど、それでも完璧な答えは用意することは出来なかった。それなのに、副島新はこんな短時間で私の問題を軽く跳躍する。多分、それは私の最後にこういう風であったらいいのにと思えるような答えなのだろう。


「ああ、とりあえず、小林主任に話してくる。あ、そういえば、今朝頼んだ書類はどの程度出来てる?」

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