幸せそうな顔をみせて【完】
「校正とコピーは終わっている。ピックアップはもう少しで半分くらい。後一時間もあれば、どうにか形になると思う。でも、確実に時間は言えないけど」


「さすが。じゃ、小林主任と話が終わったら俺もするから、それまで少し休憩。俺が戻ってきたら、一気に終わらせるから」


 そういうと、副島新は自分のバッグから書類を取り出すと、小林主任のデスクの方に向かっていく。そんな後ろ姿に頼もしさを感じながらも自分のパソコンに視線を向ける。副島新の仕事ぶりを見ていると羨ましいと思うことが多々ある。可愛くないと思われるかもしれないけど、私も一緒に仕事をしてきたという自負がある。


 好きだけど負けたくない。


「うん。でも、話は長くなるだろうから、先に仕事を終わらせるようにしとく」


 今の感じでは副島新が私の仕事での問題も解決してくれるだろう。でも、私はどうしても自分の中である程度の答えは出したい。


「葵の仕事は丁寧だし、それでいて早いから期待してる。今回はマジで助かった」


 ………。この人は…私のことを分かっているようで分かっていない。たった一言で私がどれだけやる気になるのかも…。これが分かっていてしているならこれ以上ないくらいの策士に違いない。


 でも、そこにそんなものは感じない。素直に自分の気持ちを言っているだけ。


「自分の仕事のついでだから」


「それでも感謝してる。じゃ、小林主任の所に行ってくる」


 そういうと副島新は小林主任の方に歩いて行ったのだった。自分の机に残された私が今まで以上に頑張ったのは本当のこと。
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