幸せそうな顔をみせて【完】
 必死に仕事をこなしている私の所に副島新が戻ってきたのはそれから15分くらいしてからのことだった。副島新は自分の席に座るとフッとさっきよりも大きな溜め息を零した。小林主任との話は上手く進まなかったのだろうか?何か新たな問題でも発覚したとか…??


「どうだった?上手く行ったの?」


「……。」


「ねぇ」


 少し考えながらも、副島新は…フッと息を吐く。そして、スッキリとしたいい顔を私に向ける。その表情がとっても魅力的で私を捕える。小林主任との間に何があったのだろう?


「小林主任ってマジで凄いな。俺と年もそんなに変わらないのに、どうしてあんなに広い視野で物事を見ることが出来るのだろう?本社営業一課ってそんなに意識したことはなかったけど、改めて思う」


 本社営業一課が凄いということは私も知っている。精鋭の社員が集い、それが日本中、世界中に散らばり、社の礎を築いていく。小林主任はそこに新人の時からいて、この支社に来て、いきなりの役付き。最年少の役付きになっている。まだ、30才前半の彼は副島新の言葉の通りなのだろうか?


「なにが?そんなに小林主任は凄いの?」


「俺の問題も葵の問題も無事に解決。これが上手く纏まれば、この支社の売り上げにかなり貢献する。でも、微かな物事の糸口を引く寄せて自分の物にしたのは小林主任だ。悔しいけど、あんな解決方法があるとは俺には思いもつかなかった。同じ営業として、悔しいとは思うけど、それでも、清々しいと思えるのは小林主任の性格もあると思う」


< 147 / 323 >

この作品をシェア

pagetop