幸せそうな顔をみせて【完】
「誘っているつもりはないけど」


「葵にそんな風に寂しげな顔をされると帰れなくなる。俺ももっと一緒に居たいと思っているから、明日の朝まで我慢しろ。俺の方がきっと葵の10倍は我慢しているから」


 一緒に居たいと思う気持ちは私の方が上だと思うけど、もしも、本当に私の10倍も一緒に居たいと思ってくれているのなら嬉しい。こういう一緒に居たいと思う気持ちがもっと増えると、『結婚』をしたいと思うのだろうか?まだ先のことは分からないけど、副島新は真摯な人。簡単に結婚を前提にとは言わないだろう。


 そして、自分の部屋に他人を入れることはしないだろう。


「我慢する」


 私の言葉に副島新はニッコリと笑い、私の頭をポンポンと撫でる。子どもをあやすようなしの仕草の後に零す大人の発言にまたまたドキッとしてしまった。


『金曜の夜は寝れないから、寝溜めしといて』


 私が顔を真っ赤にしたのと同時に私の肩に手を置くと、少し膝を曲げて、触れるだけのキスをする。触れた瞬間に唇どころか、一気に身体中が熱くなってしまう。綺麗な微笑みを浮かべ、私がマンションの中まで入るのを確認した後に副島新は自分のマンションに向かって歩き出したのだった。


 昨日の夜のことを思い出すと、急に身体が熱くなる。昨日の夜も身体に籠る熱を逃がすために少し温めのシャワーを浴び、私はベッドに潜り込んだ。酔いもあったからか、ベッドに入るとすぐに寝てしまい、私は夢さえも見ずに朝を迎えた。




 
< 165 / 323 >

この作品をシェア

pagetop