幸せそうな顔をみせて【完】
 ホームに到着した電車は通勤の人で溢れていて、既にほぼ満員の状態だった。出来るだけ手前の方に乗りたいと思うのに後ろに並んでいた人から押し込まれる。どんなに避けようとしても後ろからの力には抗えない。自分の思いとは別の方向に流されるのを感じた。


『どうしよう。これじゃ降りれない』


 次第に扉の辺りからグイグイと奥に身体が入っていく。駅は二つなのにこんなに奥に入ってしまうと降りにくくなるのにドンドン奥に押し込まれていく。私の身体はどうにか扉から少し離れた所で止まった。それでも二つ先の駅で降りるのは至難の業だと思う。少しでも隙間があればドアの近くに移動したい。


 そんな思いで次の駅を待つ。


 しばらくして着いた次の駅でも扉は開き、たくさんの人が降りていき、たくさんの人が乗り来んでくる。それは避けられない現実で、自分の思い描いた場所には遥か遠く流される。



『もっとドア側に行かないと』



 そうと分かっていてもこの満員電車では何もすることが出来なかった。


 焦る心を抑えながら…揺れる電車に身体を支えるので必死だった。


 駅で開いたドアから降りる人よりも明らかにたくさんの人が乗り込んできて、そんな流れに抗うように私は少しでもドアの方に向かって動こうとして、人の壁に妨げられた。


『これ以上奥に行ったら絶対に降りれない。どうしたらいいんだろう』


 次第に降りる駅が近づいていき、どうしようかと思っていると、私の腕が掴まれとスルリとその場からドア側に引き寄せられたのだった。

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