幸せそうな顔をみせて【完】
 二日連続。


 私はずっと好きだった人の部屋にいる。それもベッドの中。そのベッドの横には私は脱ぎ捨てたパンプスが転がっていた。


 抱き上げられて寝室に連れてこられたのはいいけど、まだ私はパンプスを履いたままで、その辺に落としておけと言われたけど、そんなことが出来ずにモジモジしていると、副島新が無造作に私の足からパンプスを取り去るとそのまま床にポトポトと落としたのだった。


 ポト。ポトっと。私のパンプスが音を立てながらフローリングの床に落とされていくのを聞きながら、私は身を捩るのを止めて副島新のするがままにした。


 何も出来ず、何も言わなかったのは、副島新が私のことを心底心配しているから。私のことを見つめる顔があまりにも真剣で何も言えなくなってしまっていた。


 そんなに心配そうな顔をしなくていいのにと思うけど、副島新が私を心配しているのは誰に目にも明らかで…。


「マジで熱い」


 そんな言葉と共にベッドの中に入れられたのだった。昨日、私専用と言われていたガーゼで出来たタオルケットを身体の上に掛けられる。背中にシーツを感じ、急に今日着ているワンピースのことが気になった。


 しなやかな素材で出来たワンピースだからこんな風にベッドに寝ると皺が寄る。皺くちゃになったら着て帰ることが出来ないと思い、身体を起こそうとすると、急に私の右肩を副島新が掴んだのだった。


「寝てろって」


「でも、ワンピースが皺になる」


「なら脱げば」
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