幸せそうな顔をみせて【完】
「大丈夫。ありがとう」


「葵の大丈夫は当てにならない。ほら、寝ろ」


 そういうと、ゆっくりと私の身体をベッドのシーツの上に寝せると、ベッド脇に座ったまま、ゆっくりと私の頭を撫で始める。その優しい手の動きがあまりにも気持ちよく目を閉じてしまう私がいた。


「寝たら元気になれるから」


 優しい言葉にそっと目を開けると、そこには副島新の優しい瞳があって、このまま寝ていいと言っていた。身体は怠いけど、撫でてくれる手がとっても気持ち良くて私はまた目を閉じたのだった。


「おやすみ。葵」


 自分がいつの寝たのか分からない。でも、まだ暗い寝室で目を覚ますと、私の寝ているベッドの横に座ったまま寝ている副島新の姿があった。さっき飲んでいたペットボトルの横には濡れたタオルが置いてあって、私のことを看病してくれたのだと分かった。


 自分の額に手を当てるとすでに熱はなく、サラッとしていた。


 熱があったのだからもっと汗で気持ち悪い状態になっているのかと思ったけど、顔も首筋もスッキリとしている。どう考えても熱が出ている私の身体をそっと拭いてくれたのは間違いない。そして、気付いたのがさっき着ていたシャツと違うシャツを着ているということ。


 私を着替えさせたのは…副島新以外にいない。


 熱があって汗を掻いたのだろうから、着替えさせるのは分かるけど、付き合っているとはいえ、まだ、キス以上は何もないのに、先に身体を見られたというのがどうにも恥ずかしさを募らせた。
< 91 / 323 >

この作品をシェア

pagetop