幸せそうな顔をみせて【完】
 どんな下着だった?


 そう思い浮かべてホッとしたのは昨日のデートの前に着替えた時に新しい下着をつけていたということを思い出したからだった。勝負下着ではないけど、それなりにきちんとしたものだったから安心するのは私の乙女心。好きな人には少しでも綺麗な自分を見て欲しいと思うもの。


『もしも、勝負下着なんか着ていたら、副島新はどうしたかしら?』


 そんなことを考えてみたけど、考えてみればあの副島新だ。女の下着くらいでバタバタはしないだろう。そんなことでは動じないってことは私が一番よく知っている。そんなことを考えると、濡れたからということで事務的に私を脱がしたのだと思う。恥ずかしがる方が可笑しいかも…。


 副島新はぐっすりと眠っていた。


 ベッドの脇に置いてある時計は夜中の三時をさしていてあれからかなりの時間を寝ていたのだと教えてくれる。私はベッドに横になったまま、副島新の顔を見つめると綺麗な顔の眉間には皺が寄っている。そんなに難しい顔をしないでいいと思うけど…。触れたら寝ているのを邪魔しそうで私はただ見つめているしかなかった。


 そんな副島新の顔を私はしばらく見つめていた。副島新が起きたのはそれから15分くらいしてからだった。


 副島新はゆっくりと身体を揺らし、目を開けると、私の方を見つめた。自分がいつの間にか寝ていたことに気付いたのか、ハッとした表情を零し、心配そうに私の方に身体を傾けた。


「起きたのか?身体は辛くないか?」


「うん。もう大丈夫。熱も下がったみたい」
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