ご懐妊は突然に【番外編】
週末は式場となるホテルのブライダルサロンに行き、ウェディングプランナーと披露宴の打ち合わせを行う。

…何故かお義母さんと。

匠さんは会合の予定が入っていたので欠席だ。

面倒臭いからわざと予定を入れたのではないかという懸念もあったが、疑いだしたらきりがないので、深く追求はしないでおこう。

「やっぱりシャンパンゴールドとブラウンをメインにしたシックなテーブルコーディネートがいいわねえ。メインとなる花は百合ね。あ!勿論花粉がつかないよう葯はとって頂戴」

代わりにお義母さんが張りきってくれているから、まあいっか。

「やっぱりキャンドルサービスは外せないわねえ」

お義母さんは胸の前に手を組みうっとりとした視線を宙に向ける。

「お言葉ですが葛城様、今回は出席者が多いため、各テーブルに火を灯して行くと相当時間がかかります。下手すればキャンドルサービスだけで披露宴が終わってしまうかと」

ヤリ手のウェディングプランナーの天野さんが物申した。

天野さんは歳の頃はアラフォーといったところだろうか。

恰幅がよく眼鏡を掛けており、一見すると優しそうな印象を与えるが、物怖じせずにアドバイスしてくれる。

そしてまた、その意見が的確なため、あっという間にお義母さんから絶大な信頼を寄せられるようになった。

「まあ…キャンドルサービスは絶対に入れたかったのに…」

お義母さんはションボリと肩を落とす。

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