ご懐妊は突然に【番外編】
英茉のふんわりとした茶色く長い髪には枯葉が絡みついている。

白い洋服を着させたのもミステイクだ。埃で薄汚れている。

圭人に至っては論外だ。

買ったばかりの靴は泥だらけだし、デニムも膝の部分が裂けてクラッシュデニムになっている。

仕方ない、と思いつつも、服をチョイスしたのは自分の手落ちなので苦々しい気分になった。

「ママ、お花あげる」

英茉は小さな手でシロツメクサを私に差し出した。

にっこり笑ったその顔は私にそっくりだ。

「はい、アキも」

英茉が燁子さんに差し出したのは貧乏草だった。

「ありがとう、英茉」

燁子さんの笑顔は若干引きつってるものの、英茉は満足そうに笑ってるから、ま、いっか。

「俺もいいもんめっけたあ!」

圭人も手をグーにして何かを握りしめている。

匠さんにソックリなアーモンドアイがキラキラ輝いている。

双子と言えど、二卵性双生児なので英茉と圭人はさほど似ていない。

「えー、なになに?見せてよ圭人」

燁子さんが興味深そうに覗き込むと圭人はドヤ顔で手のひらを開いた。

「ぎゃああああああ!」

その瞬間、燁子さんは絶叫する。

圭人の手のひらには大量のダンゴムシが丸まった状態で載っかっていた。

私も思わず悲鳴をあげそうになる。

「なんだよ!ブス!」

圭人は燁子さんのリアクションに気を悪くしたのか悪態をつく。

「こら!圭人!」

私が眉を吊り上げて怒ると、大量のダンゴムシを握りしめたままダッシュで逃げて行った。

英茉もその後をパタパタと追いかけていく。

我が子ながら手に負えない。後でパパにチクってやろう。
< 65 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop