ナナ色Heart
「あ、あの、やけに詳しいな……て、思って……誰かと何度も来たのかな……なんて」

あたしがそう言うと、山内君は少し驚いたように眼を見開いた。

「あ……悪い。
前に付き合ってたヤツと、来た」

やっぱり……。

胸に杭を打たれたわけでもないのに、グサッと痛い。

過去なんだから、仕方ないのに。

「そーなんだ。あたしは、初めて」

あたしはちょっと笑った。

う、多分今の笑顔は引きつってるだろーなー。

すると、テーブルを挟んで向かい合っていた山内君が、隣の椅子に移動してきて、至近距離からあたしの顔を見つめた。

「悪かった。不安にさせる気はなかったんだ」
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