ナナ色Heart
「本田さん、ありがとうございます」

玲哉君がペコリと頭を下げた。

あたしは本田さんにお礼を言ってから、渡された氷を手の甲に当てて、真朝さんの枕元に座った。

玲哉君は、悲しそうにあたしを見ていたから、あたしは笑った。

「今日ね、詩集を借りてきたんだ。愛の詩集。これを読もうと思ったんだけど、時間がなくなってきちゃったね」

玲哉君は、驚いたようにあたしを見たけど、切なそうに笑った。

「明日、読んでやってよ。……ごめんな、怪我させちゃって」

あたしは僅かに首を振った。

「平気だよ。じゃあ、今日は帰るけど……また、明日ね」

送るよ、と玲哉君が言ってくれたけど、あたしは断って病院を出た。
< 228 / 339 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop