ナナ色Heart
「嫌だ、行かない!」

全身がガタガタと震えて、あたしは立っていられなかった。

玲哉君に支えられて廊下に出ると、あたしはその場に座り込んだ。

そんなあたしの前に、真朝さんのお父さんの妹夫婦がやってきて、廊下に膝をついてあたしの顔を覗き込んだ。

何度か話した事がある、優しい感じのご夫婦だ。

「二宮さん、今まで本当にありがとう。
……真朝もきっと、凄く喜んでいると思います」

あたしは何も言えなかった。

たくさんのチューブに繋がれていた真朝さんは、それらが外されてなんだか凄くスッキリしていた。

でもあたしの眼にはそこまでしか映らなかった。
< 244 / 339 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop