ナナ色Heart
親戚夫婦と真朝さんは、暫くして、病室から別の場所へと行ってしまったから。

「二宮」

玲哉君があたしの肩を抱いて、さっきまで真朝さんの病室だった部屋へと連れて入り、椅子に座らせてくれた。

自分もひとつあたしの前に椅子を置き、腰を下ろすと静かに話し出した。

「真朝さ、心臓もかなり弱ってたみたいなんだ」

あたしは大きく息をついて、頷いた。

「逝ってしまう前に、あいつ、目覚めたんだぜ。ほんの、数十秒だったけど」

あたしは思わず顔をあげると、玲哉君を見つめた。

「あいつ、俺を見て、笑ったんだ。
今までありがとうって」

玲哉君はそこまで言うと声を殺して泣いた。
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