藤くんが今日も冷たい件について(仮)【完】
「つーか」


藤くんが花火を見ながら、私に話し掛けてきた。


「甘い」


「……え?」


「それ」


『それ』とは、どうやらチョコバナナのことを指しているようだ。



「そうかな?普通だと思うけど…」


「俺、チョコ嫌いだから」


「えぇっ?そうなの!?」



じゃあ何で食べたの…って感じなんですけど。


花火を見つめ、私の方には目を向けない藤くん。

そんな藤くんを私は花火を見るふりをしてずっと見つめていた。



花火が打ち上がる度に、頬に明かりが差してほんのり赤や青に染まっていく。


それでも


その頬の色が


花火の明かりのせいだけでは
ないような気がするのは


私の思い過ごしなのだろうか。





夏の花火の魔法。



甘い夏の思い出。





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