純粋少女と歪んだ魔法
第一章 ~赤い部屋~


 私は、壁も床もない空間を走っていた。
ただただ黒いモノの中を走る私。
何かが追いかけてくる訳でもない。

 しかし、私は躓いて転んだ。

 その瞬間、私のいた空間は歪んで ー


ー 目を覚ました。

 白い壁、白い天井、白い床。
さっきまでとは真逆の風景だった。

「大丈夫ですか、うなされてましたよ」
少し太った看護婦が、私に言った。
棒読みだが。

「あ…はい、変な夢を見ただけで。」

 看護婦は、私の返答を無視して、病室から出ていった。

 ここは、黒くなんてない。
ただ、白い、白いところ。

 少し起き上がって、周りを見渡す。
病院の中の、私だけの病室。
それ故に、誰もいない。
私の側に、大きくて複雑な機械が置かれているだけ。

 私は近くに置いてあったお茶を少し飲んで、立ち上がった。
濃いオレンジ色の私の前髪が揺れる。

 私は病院にいるけれど、体は自由に動かせるし、立つときも支えは全く要らない。
心臓が少し悪いだけだ。

 なのに何故、私がこの病室に隔離されているか。
それは、顔の右半分を赤黒いアザが覆っているからの他ならない。

だからこの病棟にいる誰もが、私を忌み嫌った。
そして、私に帰る家など無いのだ。


 ペタペタと裸足で廊下を歩いていた。
(エレベーターで屋上にでも行こうかな)
廊下の一番奥にあるエレベーターに手を伸ばしたが。
(あれっ?)

ここは一階だ、地下は無かった筈なのに。

下に行くボタンがあるのだ。

(何があるんだろう?)

面白半分で、下に行くボタンを押した。
エレベーターはもともと使用者が少ないからか、すぐに来た。

髪の後ろ、縛った短い髪を触る。
ゴォ、と音がして、エレベーターは下がっていった。


降りていくエレベーターの窓から、白い猫が見えた気がした。
< 2 / 7 >

この作品をシェア

pagetop